稲毛駅で演説中に場所取り巡り千葉市議逮捕


通勤客で混雑するJR稲毛駅前で18日朝、街頭演説中の千葉市議が逮捕された傷害事件。統一地方選に向け各立候補予定者の動きが活発化する中で、演説の“場所取り”を巡るトラブルが発端となった前代未聞の事態に、関係者の間からは「いつかこうなると思っていた」と前哨戦の過熱ぶりを指摘する声も聞かれた。

 傷害の現行犯で千葉西署に逮捕されたのは、稲毛区選出の千葉市議、谷戸俊雄容疑者(72)(稲毛区小仲台)。調べによると谷戸容疑者は、同日午前7時30分ごろ、同駅の西口ロータリーで、自分の氏名が書かれたのぼり旗を使って美浜区選出の橋本登市議(65)(美浜区真砂)を殴り、顔に軽傷を負わせた。

 現場となったJR稲毛駅の1日の利用者は約10万人。西口からは美浜区へのバス路線も開設されているため、稲毛、美浜の両区からの立候補予定者が、こぞって政治活動を行う特殊な場所となっていた。そこに、同時に行われる県議選の立候補予定者も加わり、「毎日平均5〜6人が駅立ちをしている状況」(稲毛区選挙管理委員会)だったという。

 各予定者とも朝の通勤時間帯を狙って駅に立つため「交通の妨げになる」と市民からは苦情が寄せられ、また昨年12月には場所取りのトラブルから警察官が出向いたこともあった。このため稲毛区選管では同駅周辺を視察し、各陣営に自重を促していた。

 稲毛区選出のある市議によると、立候補予定者同士は暗黙の了解で、駅に立つ曜日を調整したり、のぼり旗の本数を最小限にするなどして、無用な混乱が起こることを避けてきた。「しかし、中にはルールを守らず毎日のように駅に立ったり、5〜6本の旗を立てたりする人もいた」といい、予定者同士の争いが絶えなかった。また、立候補予定者が駅に立ち始める時間は最近では午前6時前に早まり、本人がいないのに氏名の書かれたのぼり旗を立てたままにする陣営もあったという。

 JR稲毛駅に通う千葉市内のパート清掃員の女性(59)は「谷戸さんたちはつかみ合いのけんかをしているように見えた。多くの通行人も見ていたが、かかわり合いになりたくないから、誰も止めようとしなかった」と話していた。

 また、同駅で客待ちをしていた同市美浜区のタクシー運転手岩竹貞郎さん(64)は「お互い議員なんだから譲り合えばいいのに。大人げない」とあきれ顔だった。

 今回の事件について、市選挙管理委員会は「場所取りを巡るトラブルはこれまで聞いたことがない」と困惑気味。ある立候補予定者も「手っ取り早く顔を覚えてもらうため、利用者の多い稲毛駅に集中している。誠実さを示すために毎日駅に立つ気持ちは分かるが、駅利用者はうんざりしているはず」と話していた。